おもと秋の育て方、管理

万年青 秋の管理

寒さ暑さも彼岸まで、とはよくいったもので9月下旬になってようやく秋の管理にステッチできるようになります。 おもとは1年中楽しめますが、本年の葉がでそろう秋が最も充実し美しい時期になります。また植え替えに適した季節であり、新しい環境に順応しやすいため、おもとを買い入れるのにも良い季節のひとつだといえます。

植え替えについて

首元や根が砂利の表面から出ていたり、水はけが悪くなっていたら、10月前後に植え替え、砂足し(おもとが成長して上に上がってきた時、砂を足して新根を隠す。増し土)を行います。根や芋の様子を確認する意味でも1~2年に1度を目安に植え替えましょう。植え付け用土は伊勢砂(朝明砂)・矢作砂・軽石・富士砂などを基本に、各々の作場環境や管理方法に合うようにアレンジしていきます。こまめに水やりの出来る方は水はけのよい用土で植え付け、乾きやすい環境や水やりの少ない方は水持ちの良い混合土などで植えておいたほうが管理しやすくなるでしょう。ご自分のお棚で芸も良く、葉数も多い、展示会に出品したいと思うような木があればその木だけは展示会の1週間ほど前に錦鉢に植え替えするようにしてください。植え替えの刺激と環境の変化で下葉が落ちてしまうことがあります。

置き場所

夏の間遮光していた寒冷紗はまだ付けたままにしておきます。地域にもよりますが、寒さを感じるようになる11月までは日中の強い日射しは避け、朝の柔らかい光で作っていたほうが安心です。また、この時期は台風等の接近で強風が吹くことがあります。葉を大きく揺すられたり、鉢を倒されてしまわないように注意しましょう。風を除けられる場所に避難させる場合、日頃から金枠に入れて管理すると移動がらくです。

 

水やり

残暑が終わり、彼岸を過ぎた秋の生育期になると葉や根が伸びる季節ですから水も欲しがります。鉢がよく乾くようになったら、春と同じく根どまりしないよう、朝か夕の涼しい時期にしっかりと水をやります。

肥料

9月下旬になり、暑さが落ち着いてきたら肥料を与えます。春同様に鉢縁に有機質の玉肥を置くほかに、ワラ灰のアク汁(ワラ灰約10gに水10リットル)を2回与えます。ワラ灰に含まれるカリ分によって根や芋が丈夫になります。

病害虫対策

まだまだ病害虫に油断はできません。夏の猛暑時よりも幾分涼しくなった秋に病害虫がみられます。春同様にベンレートなどの殺菌剤やオルトラン粒状剤を活用し予防に努めましょう。

 

秋から冬にかけてのトラブル

 

こんにちは、万年青の豊明園です。

今回は、お客様からの質問にもよくある、秋から冬にかけてのトラブルについてお話します。

秋から冬は、夏の高温による高温休眠から覚めて秋の生長期、寒くなってきて霜が降りる頃には冬の休眠期に入っていきます。

その間のトラブルとして、

秋の病害虫、植え替え後の葉落ち

秋の肥料、図、虎などの柄の暗み

冬の強風、寒風による葉焼け

霜、寒さ、日による葉の退色 などが考えられるので、

どんな症状なのか、と、対処法について解説していきます。

スリップス 春から夏の食害が多いですが、秋にも温かい時は発生します。

顕微鏡写真 1ミリ前後の体長

スリップス 日本名 アザミウマ

秋の病害虫

秋の病害虫については、春から夏の病害虫と同じで、発生前に殺菌剤、殺虫剤による抑え込みが大切です。

春夏ほどは活発ではありませんが、万年青の生長期には葉を食べる害虫赤星病などの病原菌も元気になるので、発生前に噴霧しておきます。温かい秋では発生が多いので、しっかりと、寒い秋では病害虫も発生が弱いので、注意深くみながら対策をします。

私たちはこの量を3回ほどやります。

病気と虫はまた別なので、それぞれ対処します。

ペタット 虫をくっつける

EUなどの海外に送る際も、こちらをつけて虫の検査をして、輸出しています。

 

 

植え替え後の葉落ち

一番多いご相談です。

葉が落ち始めて、黄色くなっている。よく見ると、腰が太くなり、葉が元から割れているものも

 

春と秋は植え替えのベストシーズンなので、首元や根が砂利の表面から出ていたり、水はけが悪くなっていたら、植え替えをされる方も多いでしょう。私達も、1年から3年に1回の植え替えを基本にしてやっております。植え替えをすると、鉢の中の環境はガラッと変わるので、それが刺激となって新根がでて、外側の下葉は落ちていきます。万年青は植え替えひと月以内に葉を1~3枚落とします。

これは自然なことなのでしょうがないことですが、初めてではびっくりしてしまうかもしれません。秋芽もでてくるので、大らかに構えて、自然の摂理と、気にせずに楽しみましょう。今年の新葉の数以上に葉がおちるようならちょっと心配なので、もう一度植え替えをして根芋をチェックしてもよいでしょう。

春から秋までの生長期の葉落ちは自然なことです。世界中のおもとで葉が落ちています。

 

秋の肥料

こちらはトラブルではありませんが、この肥料をやることで、秋芽、また、来年の春夏の生長が違ってきます。この時、植え替え後、2週間は肥料を置かないようにしましょう。根がしっかりと根付いてないところに肥料を置くことで、根落ちした根元や芋が傷むことがあるので、気を付けます。

天光冠 ゆっくりと肥料を効かせます。

良く成長しているときは、2-3個置きます。

 

図、虎などの柄の暗み

図物、虎物、アケボノなど、万年青には様々な柄があります。性(しょう)、性質の性の字を書いてしょうと読みますが、この性がよいものですと、秋から冬にかけて寒くなるにつれ、柄がより白く抜け、目も覚めるような美しい柄をみせます。

しかし中には、綺麗な図、虎、曙、などの柄を焼きたくない、と思ってしまい、日に当てるのを怖がってしまい、暗んできます。万年青を大切にしたい気持ち、美しい柄を残したい気持ちは十分わかりますが、綺麗な柄をしっかりと固定させるために、秋から冬もできるだけ朝日をとった方が、柄は冴えてきます。

外輪山 曙柄

朝日、日に当てずにおくと、秋に色が暗んできてしまいます。

 

 

冬の強風、寒風による葉焼け

これは都市部、山間部どこでも起きるのですが、冬の寒く強い北風、西風がオモトに当たることで、白い部分が乾燥して葉焼けを起こします。都市部ですとビル風や、家のすき間を強く吹く風、建物や木などの関係で巻き込んで吹く風で葉焼けをしてしまいます。

これは、寒い2-3月まで続くので、強い風がもろに当たってしまう場所ではビニールや不織布、よしづなどを周りに張って、風を止めたり弱めたりするのがよいでしょう。

強い光だけでなく、風で葉が焼けるのは想像しにくいかもしれません。白い部分が弱いです。

お客様の暴風、強風、寒風対策

 

霜、寒さ、日による葉の退色

霜、寒さ、日に長時間あてることで、冬場に緑色が薄くなることがあります。これは肥料が足りていないから起きます。秋と春の生長期の肥料を幾分増やしたり、薄い液肥をやるとよいでしょう。

この時期に緑が薄くなるのはある意味自然で、ここで少し薄くなった方が、来年もっとオモトが強くなる、人間でいうと、全体の免疫が上がりますので過保護にはし過ぎないようにします。春の梅の時期から肥料をすれば、だんだんと色は戻ります。

こちらは寒さで葉が凍り、色が濃くなっています。それでも問題ありません。この時は-5~-10℃ほどだったか。葉の緑はかなり薄くなっているのは分かると思います。和多志たち万年青の豊明園では、世界中に万年青を出荷するので、なるべく肥料を少なく、厳しい環境を耐えられた万年青を出荷するよう心がけています。

 

雪舟の絵にもあるように、雪にも耐える万年青の生命力を、昔の日本人はとても大切にしてきました。

まとめ

秋の生長期にも病害虫が発生するので、早めの予防。

植え替え後には下葉は落ちる。植え替え後、2週間は肥料を置かない。

白さのきれいな図、虎、曙などは、ギリギリまで朝日をあてよう

冬の強風、寒風が厳しいところでは風対策をしよう。

春によくやる、スリップス対策のオルトランDX.スリップスをきちんと抑え込めなかった場合、秋にもやります。

 

このように、秋から冬のトラブル、注意事項をご紹介しました。美しい万年青を楽しむために、ちょっとした手間も楽しんでください。

 

 

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