「家康とオモト」 NHK講師・ 元奇跡の星の植物館研修生 豊明園
家康と万年青
万年青(おもと)は、めでたい植物、不老長寿の縁起のよい植物といわれています。慶長11年、徳川家康公が江戸城入城に際し、家康公は愛知県三河の長島長兵衛から贈られた斑入りのおもと3鉢を抱え入城し、おもとを床の間に飾り徳川300年の繁栄を築いたという古事が広く知られ、現在も家康公が愛した【永島】という万年青が現存しています。
徳川家康公が愛した永島 NHK趣味の園芸にも登場した永島
家康は万年青に万年の繁栄と魔除けを託した
家康公が逝去した即夜に移された久能山東照宮には、東照宮という神様になった家康公にしか見えない位置、代々の徳川家当主しか入れない場所に万年青彫刻が彫られています。他にも、日光東照宮、二条城、上野東照宮など、徳川家が関係する寺社仏閣には泰平の世と魔除けの印として、万年青彫刻が彫ってある、万年青が植えられている寺社が20社以上あります。
久能山東照宮の万年青彫刻
国宝となり、この彫刻は徳川家当主しか完全に見れなくなった
国宝・久能山東照宮の深部にある万年青彫刻
久能山東照宮のお守りには、万年青が描かれている
久能山東照宮への万年青奉納
万年青の仲間と、徳川家康公から続く万年青文化に感謝して、皆で奉納しました。
武士の精神修養としての万年青
江戸時代も中ごろになると、武士の役割がだんだんと変化していきます。 戦で戦うことがなくなった泰平の世のため、家でできる園芸という楽しみをする武士も多く、園芸文化が発展していきます。例えば、今から250年ほど前の熊本藩の殿様、六代藩主・細川重賢(ほそかわ しげかた)公は、家臣の精神修養に園芸を奨励し30種ほどの園芸をさせ、今も肥後六花として現存しています。将軍から庶民まで、日本全体が花や園芸を楽しむ文化だったのですが、園芸と武士の武士道が化学反応を起こすことで、万年青の中に弱きを助ける独特な美意識、奇品珍品(ビザールプランツ)を尊ぶ世界でも稀な園芸文化が生まれていきました。
世界の中の万年青
7000年前から薬草、霊草として用いられた中国では、中国の皇帝や、孔子の子孫が結婚、代替わりの際に常に万年青が用いられたように、万年の繁栄を象徴する、天福の霊草として大切にされています。英語ではSacred lily(聖なるユリ)として、神聖な植物として伝わっており、日本の文化を愛する、世界の万年青愛好家も日々増えています。
中国・清の皇帝と万年の繁栄を願う万年青
皇帝の宮殿に飾られる、赤サンゴ、翡翠、宝石をちりばめられた万年青