『農業全書』(のうぎょうぜんしょ)は、元禄10年(1697年)刊行された農書。出版されたものとしては日本最古の農書である。
全11巻あり、1巻から10巻は、元福岡藩士の宮崎安貞(みやざき やすさだ)著。11巻は貝原益軒の兄貝原楽軒著で付録である。序文は貝原益軒。刊行には貝原一族が深く関わっていた。
明の『農政全書』に多く知識を得ながらも、日本の事情に合うように執筆されている。植物の絵入りで、五穀・菜・菓木など当時栽培されていた植物がほぼすべて網羅されている。ただし、筑前藩をはじめとして西日本を巡回し、それを基とした執筆のため、栽培適期などは西日本に適合している。また、農業政策の一環として、農民に薬種の栽培を奨励するなど、国益思想を具体的に論述している先見性も評価されている。
最も体系的な農書という評価を得ており、日本の農業に与えた影響は計り知れない。明治に至るまで何度も刊行され、多くの読者を得ただけでなく、本書に影響・刺激を受けて執筆された農書が数多く存在する。現在でも岩波文庫から出版されている。
- 農事総論 90条
- 五穀之類 99種
- 菜之類 96種
- 菜之類 923種
- 山野菜之類 98種
- 三草之類 91種
- 四木之類 94種
- 菓木之類 97種
- 諸木之類 95種
- 生類養法 93種 薬種類 922種
- 付録
水戸の徳川光圀は、「これ人の世に一日もこれ無かるべからざるの書なり」と絶賛し、八代将軍徳川吉宗も座右の書に加えたほどであった。
※徳川 光圀(とくがわ みつくに)は、常陸水戸藩の第2代藩主。「水戸黄門」としても知られる。 水戸藩初代藩主・徳川頼房の三男。徳川家康の孫に当たる。儒学を奨励し、彰考館を設けて『大日本史』を編纂し、水戸学の基礎をつくった。
農薬がなかったころ、アブラムシなどの害虫や病原菌の殺菌にも灰を用いていました。江戸時代の1697年(元禄10年)の「農業全書」には、灰がなければ、そばと大麦を播いてはならない、とまでいわれ、ことに小麦には灰肥が最もよい。麦の肌肥に混ぜて入れれば、寒さを防ぎ、生育もよくかんも堅くしっかりしていて倒伏することはがない。と灰の効能を紹介しています。
※「農業全書」 著者は宮崎安貞。京都遊学の際、農業に詳しい儒学者の貝原益軒と出会い、農業について学んだことがきっかけで、その後は自ら希望して農業に従事することを決めた。やがて安貞は、大蔵永常(おおくら・ながつね)、佐藤信淵(さとう・のぶひろ)とともに江戸時代の三大農学者と呼ばれるまでになった。安貞は農耕のかたわら農業技術の改良に努め、全国各地を回って経験豊富な老農からノウハウの聞き取り調査を行いました。その40年の知見、自分の経験をまとめたものがこの「農業全書」。
・第1巻 農事総論
・第2巻 五穀之類
・第3、4巻 菜之類
・第5巻 山野菜之類
・第6巻 三草之類(ワタ、藍(あい)、タバコなど工芸作物)
・第7巻 四木之類(茶、漆、楮(こうぞ)、桑)
・第8巻 果木之類
・第9巻 諸木之類
・第10巻 生類(しょうるい)養法(家畜、家禽(かきん)、養魚)・薬種類
・第11巻 附録(農民の心得)
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