草木性譜 3巻
『草木性譜』は『有毒草木図説』と共に、1827年(文政十年)に同時に刊行された本草学の傑作の一つ。この2つは相互関連をもつもので、わが国独自の本草・博物学の到達点とされる。著者の清原重巨は、当時江戸・京都と並ぶ本草学の盛んな地であった尾張の本草・博物学グループ甞百社の中心的人物である。※本草学とは、薬用に重点をおいて、植物やその他の自然物を研究した、古来の学問
『草木性譜』は代表的な草本四十五種を選び、天・地・人の三巻から成る。代表的な45種の中に万年青が含まれていること、『有毒草木図説』ではなく、『草木性譜』に万年青が入っていることから、万年青が有用な薬草の代表として考えられてきたことがわかる。
図はいずれも力作で、水谷豊文、犬窪昌章などが描き、その資料的価値も高い。解説された植物で外来植物として当時珍しかったと思われるものに、仙人掌(サボテン)、落花生、玉蜀黍(トウモロコシ)、甘蕉(サトウキビ)、木蘭(モクレン)などがある。
万年青の絵は、万年青の花や実を描いたもの。左は万年青の実がびっしりとついたところ。互い違いに実がつくところや、実の先端に黒い点ができるところなど非常に写実的。右の中央の花の場合は梅雨前後の新芽が出ている途中だったり、めしべおしべの雰囲気もきちんと伝えています。根・芋や右側の昨年の花茎部分、虫食いまでも描いてあり、現物から丁寧に描かれていることが分かる。
解説文には、葉の生え方、花や実のでき方、真冬に実が赤くなることなどの万年青の生理がまず書かれています。
次に文化として、新築、引越し、結婚、出産などのすべての喜び事、めでたき事に万年青を用いる、縁起物であることが記されています。
イギリス・スコットランドのエディンバラ植物園の書庫にもあります。
国会図書館より