『萬年青百種大観』橋本八重三著 和装・石版彩色 東京 六合館発行 昭和二年六月発行
当時流行の萬年青百種を紹介解説してあります。
百種の内、実親十種、裏芸十種、獅子一種、小葉十三種、中葉四十二種、大葉二十四種。
この本が出版された昭和初期では中葉のゆったりした葉芸のおもと、紅流や今では想像も出来ないような裏芸を持った珍奇おもとに人気があったようです。
『玉獅子』たまじし
大葉の玉葉で、葉先大きく巻きて覆輪を有す、葉緑に大波ありて、玉獅子の名前あり珍品として推賞せらる
『幡龍』ばんりゅう
垂葉性の大葉で亂形(みだれがた)に生じ青無地
『犀角』さいかく
立葉性の筒葉で、亂形に生ず、葉面は青無地に甲竜を有し、犀角に似たるを以って其名あり
『文鳥丸』ぶんちょうまる
『日月星』じつげつせい
半立葉性の中葉で、葉は左右の両縁から中央へ巻き込み、純白の鮮やかな覆輪を帯びて葉裏は細き縦筋を現はし
珍種として好事家の愛賞措かざる逸品なり
昭和二年「日月星」が葉一枚につき三円五十銭くらいで、「根岸の松」の最高は百五十円、「地球宝」の最高は三百円、「天錦章」の最高は二百円、せけんでは名古屋オモト人気といわれ、名古屋広小路通りの露店ではどんなオモトでも飛ぶように売れたということです。
この中でおよそ十三種ほどが現在も楽しまれており、玉獅子・根岸の松・文鳥丸・残雪・日月星・古今輪の虎(富士の雪)虎の子・紅骨(紅流し)・都の城・松の霜・江戸紺・白鷹・古今輪(一文字)、などです。